ニョロンとケロン

主にペットのヘビとカエルのお話です。

へび君の魔法の口

お日さまにこにこ、良く晴れた日のこと。
森の広場にかえる君、ひよこちゃん、ねずみ君がいました。
かえる君は、何やらプンプンと怒っています。
ひよこちゃんは、下を向いて泣いています。
ねずみ君は、難しい顔をしながら、行ったり来たりと、ウロウロしています。

そこに、頭にクリーム色の星印がある、青色の大きなへび君が来ました。
「いったい、どうしたの?」
みんなの様子を見たへび君はたずねました。
「友達とケンカしたんだ」
かえる君は、お腹をプク~と膨らませて言いました。
「わたしは、お母さんに怒られたの」
ひよこちゃんは、またシクシクと泣き出しました。
ねずみ君はと言うと、まだ難しい顔をして悩んでいます。






イメージ 1







「キミは、どうしたんだい?」
へび君は、ねずみ君を見ました。
すると、ねずみ君はへび君の顔をじっと見つめ返して言いました。
「ボクはずっと考えていたんだ。ボクって、いったい誰なんだろうって…」
「キミは、キミじゃないの?」
へび君は、ねずみ君の真剣な顔を見ながら、尻尾の先でほっぺたをポリポリとかきました。
「沢山のねずみ族の中で、ボクが《あの子》じゃなく、《ボク》だっていう証明が欲しいんだ!」
ねずみ君は、同じ色をした大勢の兄弟の事を思い出しました。
「そんなの、名札付ければいいんだ」
「自分だけの印を描けばいいのよ」
かえる君とひよこちゃんが言いました。
そのふたりの答えに、ねずみ君は頭を振りました。
「ボクが言いたいのは、そんな見た目のことじゃないんだ」
ねずみ君は、ハァーと、溜め息を漏らし、肩を落としました。
その姿を見たへび君は言いました。
「つまりキミは、他の誰でもない、たったひとりの自分、“個性”を探しているんだね?」
へび君の言葉にねずみ君は、ハッとして顔を上げました。
「そう、それっ!!」
へび君の言葉を聞いたかえる君、ひよこちゃんは、それがどういうことなのか分かってはいません。さっきまでねずみ君がしていたような難しい顔をしてしまいました。
へび君はねずみ君に、「自分というものは、自分で作っていくものなんだよ」と、優しく伝え、続いて皆が驚くような事を言いました。
「ボクの口に飛び込んでごらん。違う世界に行けるから。そこで自分探しをしてくるといいよ」
へび君は、クルクルっと二回、尻尾の先で頭の星印を撫でました。そして、ア~ンと大きく口を開けました。
さすがにこれには、皆ビックリしてしまいました。かえる君、ひよこちゃんは慌てて自分の家に帰ってしまいました。
だけどねずみ君は、ギュッと目を閉じ、「えいっ!」と、声を出して、へび君の口の中に飛び込みました。







イメージ 2










飛び込んだ後、恐る恐る目を開けると、辺りは真っ暗闇でした。
『ずっと真っ直ぐに行ってごらん』
立ち止まっているねずみ君の耳に、へび君の声が聞こえました。
ねずみ君は、言われた通りにズンズンと歩いて行きました。
沢山歩いて少し疲れ出した頃、遠くにポツンと明かりが見えてきました。
ねずみ君は、その明かりが嬉しくて、思わず走り出しました。






イメージ 3








たどり着くとそこは、とても不思議な場所でした。
お日さまの姿が見えないのに、お昼のように明るいのです。
地面には、大好きなタンポポの花が沢山咲いていました。
そして何よりも驚いたのは、まるで岩のように大きなチーズの塊があったことです。
いっぱい歩いたねずみ君は、ちょうどお腹が空いていました。
「そうだ、このチーズで家を作ろう」
ねずみ族の誰も住んだことがないような、立派なチーズの家にしようと、地面に家の設計図を描きました。
ねずみ君は、いろいろ考えているうちに、とても楽しくなってきました。
入り口となる場所を決めると、カプリと、そこのチーズを食べ始めました。
チーズの味は、最高に美味しくて、ますます夢中になって家造りを頑張りました。







その頃へび君は、大きな岩の上で日向ぼっこをしていました。
そしておもむろに尻尾を上げたかと思うと、プリッ、と、地面にフンを落としました。















★ ・ ☆ ・ ★ ・ ☆ ・ ★ ・ ☆




これで『あおね』が、このブログに登場するのを終わりにします。

最後は楽しく見送りたいと思っています。